【高橋 壮芳】#04 医療の世界では100%はなく、中間のグレーの部分が多い世界だと感じています

患者さんのわがままは信頼関係の証

医師にとって病院はホームグラウンドですが、在宅は患者さんのホームグラウンドなので、そこでは医師はいわばアウェイです。そこに抵抗を感じる医師もいるのではないでしょうか。

とにかく在宅診療では、患者さんはわがままを結構言います。病院の中ではまずそのようなことはないでしょう。

しかし私は、患者さんのわがままは信頼関係の証だと思っていますので、わがままは言ってもらったほうが良いと思っています。ましてや、在宅の患者さんの多くは高齢者で、私たち若輩は人生の先輩として敬うことを心掛けるべきだと思っています。

ですから当院では全医療スタッフに対して、患者さんとご家族に礼を失するような態度は厳しく戒めています。

あえて何もしないという選択

ある会合で聞いた、「治療をしないという選択をできることが良医の条件である。」という一人の医師の言葉に非常に共感を覚えました。治療をしない選択ができるかどうか。これは在宅医療を含めた医療の課題かもしれません。

医学の発展に伴い延命の技術は進みましたが、そもそも治療を行うことの必要性があるのかと疑問に感じる場面もあります。

基本的には患者さんに管一本付けないで、何もしないで臨終を迎えてもらうことが私の理想としているところです。

今までは点滴や胃ろうが当たり前のような風潮でしたが、はたして患者さん本人がそれを望んでいるのか。そのような時に、何もしないことが患者さんのためになる。何もしなくても良いと患者さんや家族に説明できること。

そしてご家族に対して、何もしないことに耐えられる安心感を与えられることが医師として人としての技量だと思うのです。そこに寄り添える医師であり人でありたいと思っています。

多様性が在宅医療の魅力

また最近では、胃ろうは悪で不要のような風潮もあります。しかし、家族にとっては最良の選択肢であったりすることもあります。在宅医療の現場では患者さんの状況に合わせてケースバイケースで考えなくてはなりません。パターン化して一律な対応をすることは不可能です。

総合的に考え関わっている方々と連携していく気概が在宅医療に関わる医師には求められるのです。そのパターン化していない、ありとあらゆる選択肢があるということが在宅医療の魅力だと思います。

私は医療の世界で100%はないと思っています。

「絶対に家には帰れない。」「絶対に治らない。」逆に「絶対治る。」とか、医療では絶対と断言できることは無いと考えています。

絶対と言える白や黒ではなく、その中間のグレーの部分が多い世界と感じています。実は診断が付かないことも非常に多い。

医師になったばかりの頃は、明確に診断がつかないというそのはっきりとしない世界が私には苦しかった。しかし、現在は本人家族と話し合って、このグレーの部分の中から70%上手くいく治療でも、30%しか上手くいかない治療でも本人やご家族と相談して選択することが可能です。

この多様性が在宅医療の魅力であり、その中から最良の選択をする手伝いができることに在宅医としての充実感を感じています。

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坂本諒 法人 役職

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あえて治療をしないという選択ができることも、在宅医の条件だと思います。

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