#03 レスパイトケア施設「うりずん」をスタートさせる。

家族全員に目を向けることの大切さ。

母親はどうしても障がいのある子どもの世話に目が向きがちです。ともすると他の兄弟姉妹は後回しになってしまい、寂しさや疎外感を感じさせてしまうことがあります。その結果、兄弟姉妹の中でいろいろな思いや感情が生まれてしまいます。

ある呼吸器をつけた8歳の女の子の訪問診療では、必ず妹さんにも声を掛けて、時には一緒に遊んであげるようにしています。「あなたのこともちゃんと見ていますよ。」と。

そうすると妹さんは、「お姉ちゃんだけでなく自分にも関心を持ってくれている。」と思い安心します。些細なことですが大事なことです。
また、家庭の中でお母さんが健康を壊すと、子どもの健康状態も崩れがちになります。家族全体の状況や状態に気を配っていくことも医師の
仕事だと思っています。

時として関係性は専門性を超えると思っています。医師と、患者さんや家族との間に信頼関係があると、いろいろなことを相談してくれます。在宅医療にとって、それはとても大切なことです。

重い障がいのある子どもの日中お預かり「うりずん」をスタートさせる。

レスパイトケア施設「うりずん」を始めるきっかけとなったのは、人工呼吸器をつけた子どもさんの訪問診療に伺った時に、お母さんが熱を出して寝込んでいて、代わりにお父さんが仕事を休んで看病している姿を目の当たりにしたことです。

24時間目が離せないわが子の介護にあたる両親には、ひと息つける時間も取れず、緊急時に子どもを預けられる場所も無い現状でした。

何かできることはないかと始めたのが、重い障がいのある子どもをボランティアで日中数時間お預かりすることで、親が一休みでき、仕事にも出られるようにする研究事業(在宅医療助成 勇美記念財団)でした。2007年のことです。

行政の制度も前例もない中で民間の助成金を受け、実際のお預かりをスタートし、小さな診療所であっても、環境を整備すれば人工呼吸器をつけた子どもを預かることは可能であることを証明しました。

その取り組みを知った宇都宮市が制度を作ってくれ、2008年に「宇都宮市障がい児者医療的ケア支援事業」として行政からの支援が始まりました。この陰には、行政だけでなく多くの方からの働き掛けがあったのだと思います。

2012年からは、「特定非営利活動法人うりずん」として活動の範囲を広げています。

「うりずん」のスタートは、最初の頃から周囲には無謀な取り組みに見えたようで、懇意の先生からも随分心配されました。

でもシスタービンセントの、「あなたの目の前にある必要なことをやりなさい。そうすればあなたにとって必要なものは現れます。」の言葉が私の原動力となりました。

今でも経営的には決して楽ではありませんが、「うりずん」の運営は、多くの方々から寄せて頂いている善意の寄付により支えられています。それは本当に嬉しいことです。

「うりずん」の感謝の木

うりずんの玄関ホールに感謝の木という大きな絵があります。この樹には、ご支援をいただいた方のお名前が書かれた葉っぱのプレートが貼られています。支えて下さる方が増えると、だんだんと葉っぱが増えていきます。

毎年、多くの方々から善意の寄付が寄せられています。
昨年のクリスマス会でも、いろいろな方面から多くの方々のプレゼントやご支援を頂きました。

病児保育「かいつぶり」の開設

クリニックの2階に併設している病児保育施設が「かいつぶり」です。

私の故郷である滋賀県の県鳥で、琵琶湖にいる水鳥の名前から取りました。

健康な子どもが、風邪やインフルエンザ、水ぼうそうなどにかかると保育園などでは預かってもらえませんから、働いているお母さんは仕事を休まざるを得なくなり困ってしまいます。そんな病気の子どもを、日中お預かりする施設が病児保育かいつぶりです。

医療機関のひばりクリニックに併設しているので、病後児だけでなく病児にも対応できます。それと、幼児だけでなく小学生もお預かりできるのが特徴です。

3名の常勤スタッフがいますが、時にはお預かりする子どもさんが一人とか、突然の予約のキャンセルが入ったりと、まだまだ運営は厳しい状態です。それでも困っている人のお役に立てる事業ですから何とか続けて軌道に乗せたいと思っています。

この記事の著者/編集者

坂本諒 法人 役職

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この連載について

本人だけでなくその家族も支えることが小児在宅医療だと思っています

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