#01【杉山力一氏】国内屈指の産婦人科医院をつくり上げた2代目院長

杉山産婦人科は、60年の歴史で培った経験と最先端医療を融合させ、生殖医療科(不妊治療/内視鏡手術)と産科婦人科(分娩)の機能を兼ね備えた国内屈指の産婦人科医院だ。 杉山力一院長は「ご妊娠/ご出産という人生最大のイベントに立ち会える幸せを改めて胸に刻み、「Every Patient here is a VIP(当院の患者様はすべてVIPです)」をモットーに皆様と夢を共感して参ります。」と語る。 生殖医療専門医、内視鏡技術認定医、培養士、産科専門医、麻酔専門医、小児科医、看護師、受付スタッフの全員が不妊治療に携わり、生殖医療科では休診なしでの診療を行っている。(全3回) (『ドクタージャーナル Vol.8』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

60年の歴史で培われた産婦人科病院の経験

杉山産婦人科は、祖父が約60年前に東京都杉並区和泉に開業しました。祖父の信条として、私が幼少の頃の杉山産婦人科では、患者さんと同等に看護師や職員たちを大切にしていました。

当時は看護師さんも住み込みで一緒に住んでいたので、杉山産婦人科には家族のようなアットホームな人間関係がありました。

私は幼少の頃から職員旅行に一緒についていったり、職員の皆さんにも可愛がってもらったりと、そのような家庭環境で育ちましたので、将来は当然のこととして産科医になるものだと思っていました。

その後、大学病院の勤務医であった父親が急逝したため、私が祖父から杉山産婦人科を継ぐこととなり、2代目院長となりました。

平成11年に体外受精専門クリニックを開業

大学病院でも体外受精を専門に取り組んでいたので、平成11年に小さな体外受精専門の杉山レディスクリニックを開業して、従来の産婦人科と新たな不妊治療クリニックの両方を切り盛りしていました。

当時は今ほどには不妊治療や体外受精をあまり人に言えないような時代で、患者さんも不妊治療クリニックに入り難い時代でした。その後、体外受精が流行りだし患者さんも増えてきたので、新たに大規模な体外受精専門クリニックとして同じ地域内の近くに移転しました。 

平成19年には、それまで別々で開業していた生殖医療科と産婦人科を合併させて総合産婦人科としての現在の杉山産婦人科を開院しました。さらに平成23年に不妊治療専門クリニックの杉山産婦人科丸の内を開設し今に至っています。

ですから、祖父から杉山産婦人科を引き継いだ後に、2つのクリニックと現在の総合産婦人科としての杉山産婦人科、丸の内の分院の4つを作ったことになります。

田中温先生から非常に多くのことを学ぶ

東京医科大学で体外受精に取り組んでいた時代はまだ体外受精自体が珍しく、術数も多くて週2回位しかなかったので、更に勉強がしたいと思い北九州市のセントマザー産婦人科に半年間の国内留学をしました。

院長の田中温先生は体外受精では日本で屈指の著名な医師で、そこには全国各地から患者さんが来院され、当時でも毎日20人から30人ほどの体外受精を行っていました。

田中先生とは私の祖父の縁で、普通ではありえない半年間の住み込み研修を受けさせてもらいましたが、先生からは、こんな事は最初で最後と言われたのを覚えています。

あっという間の半年間でしたが、田中先生と生活も共にする中で、非常に多くのことを学び多大な影響を受けました。

お産の安全神話の危うさ

-産科医は、「新しい生命の誕生に立ちあう」という崇高な仕事だと思います。しかし一方で、勤務の過酷さや訴訟のリスクの高さという負の側面ばかりが目立っているような気がします。日本の産婦人科の数は医師全体の5%なのに、訴訟の数は医療訴訟全体の12%を占めるというようなデータもあり、分娩時に不具合が生じた場合は全て”医師のせい”と考える風潮があるようにも感じます。特に福島県立大野病院産科医の不当逮捕事件は地域医療に貢献していた医師の意欲を低下させ、またリスクに対しての萎縮を招いたと言われ、地域における産科医療を崩壊させかねないとして、当時の一部マスコミや警察が非難されました。-

「子供は無事に産まれるのが当たり前」というお産の安全神話がありますが、そのような世間の思い込みが産科の難しさになっていると思います。確かにお産は安全であるべきですし、実際に日本におけるお産の安全性は世界でトップクラスです。

しかし安全神話が一人歩きすると、医師にある種のバイアスがかかり、分娩時のトラブルを予防する目的で帝王切開が積極的に行われるようになる事などもあるでしょう。現実には帝王切開だって、100%安全というわけではないのですが。

産科医を目指す医師は少なくなっている

産科医に限った事ではないですが、今の時代は患者さんとの人間関係がとても難しくなっています。

特に産科では、一生懸命にやっても結果が悪いと急に裁判を起こされたりすることがある。時には犯罪者扱いされたりします。患者さんの立場になったらその気持ちも判らないではないですが、しかし産科医にとっては難しい時代になっています。

お産ではいろいろな事が起きますから気を抜けません。中には重篤な既往症を持っている妊婦さんもいます。

いま産科医の成り手が少ないのは傍から見ていて産科医がハッピーには見えないからだと思います。

実際に産科医を目指す医師も少なくなっていますし、それまで産科をしていた医師たちの中にも、福島のあの事件があってから産科医をやめているというケースも多いのです。

杉山力一

昔の体外受精とは

昔の体外受精では、凍結技術が無かったために1回の施術で受精卵を使い切っていました。一度に2つ、3つと複数の卵子を子宮に戻していましたので1回での妊娠率は高いのですが、双子や三つ子が多いというのが特徴でした。

今は双子を防ごうとしますので1回の施術で卵子を1つずつしか戻しません。受精卵を凍結してその都度使うようになっていますので受精卵が無駄になることもありません。

しかし時には一人の患者さんの施術数が多数回に及ぶこともあり、時間や費用の面で途中で挫折したり諦めたりしてしまう方も多くおられます。

確かに1回あたりの妊娠する確率では昔の方が高かったと思いますが、トータルで見れば体外受精で妊娠されている患者さんの総数は現在の方が多いです。

妊娠と出産を分業にするのは良くない

当時は体外受精による双子の出産も多かったので、お産の時には産科医はそれこそ夜を徹して妊婦さんの出産に立ち会うことも多く大変な激務でした。そんな産科医の姿をセントマザー産婦人科でもたくさん目にしました。

私の専門は体外受精ですが、今も産科医院としているのは、セントマザー産婦人科で研修を受けていた時に田中先生から、

「妊娠と出産を分業にするのは良くない。産科医であるならば妊娠から出産まで責任を持って患者さんを診るべきだ。」

と指導されたことと、産婦人科医としての田中先生の姿勢に感銘を受けたからです。

しかし実際に病床を持つ産婦人科を継続するためには、専門スタッフを集めるのも大変ですし、施設も充実させなければならないので、何度も産科を辞めて不妊クリニック専門にしようかと悩んだこともありました。

でも今は、妊娠だけで終わるのではなく、妊娠から出産まで、さらにできれば小児科の前半くらいまでは1つのクリニックの中で使命感と責任を持って患者さんを診ることができるようになるのが、杉山産婦人科のあるべき姿だと思っています。

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この記事の著者/編集者

sugiyama_rikikazu 杉山産婦人科 院長

医療法人社団杉四会 理事長 杉山産婦人科院長
平成6年東京医科大学卒業、平成10年北九州市のセントマザー産婦人科で6ヶ月間の研修を受ける、平成12年杉山レディスクリニック開院、平成19年産婦人科総合施設として杉山産婦人科開院、平成22年杉山産婦人科丸の内開院、平成30年1月杉山産婦人科新宿新病院開院予定。

この連載について

不妊ドックに力を入れる不妊治療専門医 

連載の詳細

杉山産婦人科は、60年の歴史で培った経験と最先端医療を融合させ、生殖医療科(不妊治療/内視鏡手術)と産科婦人科(分娩)の機能を兼ね備えた国内屈指の産婦人科医院だ。 杉山力一院長は「ご妊娠/ご出産という人生最大のイベントに立ち会える幸せを改めて胸に刻み、「Every Patient here is a VIP(当院の患者様はすべてVIPです)」をモットーに皆様と夢を共感して参ります。」と語る。 生殖医療専門医、内視鏡技術認定医、培養士、産科専門医、麻酔専門医、小児科医、看護師、受付スタッフの全員が不妊治療に携わり、生殖医療科では休診なしでの診療を行っている。(全3回) (『ドクタージャーナル Vol.8』より 取材・構成:絹川康夫、写真:安田知樹、デザイン:坂本諒)

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