#03 新宿区大久保は特殊な地域性を有し、20年後の日本の姿がここにあります。

新宿区は国内で外国人登録者数が最も多い地域です。

なかでも大久保地域は外国人居住者、特に韓国、中国、ネパール、タイなどアジア系の居住者が多く、それらの異なる文化を持つ人種が共生する多文化都市ともいわれています。
新宿区大久保という特殊な地域で開業していて、いろいろな発見がありました。
ひとことで言えば、20年後の日本の姿がここにあると言えるかもしれません。

理由の一つに、実はこの地域での日本人の高齢者は減ってきているのです。
住民の高齢化率は16%ほどです。ただその中に一人暮らしの高齢者が40%もいます。

それと、壮年層も含めて生活保護を受けている人が非常に多い。
加えて外国人居住者の多さです。クリニックがある大久保2丁目では37%が外国人居住者です。大久保1丁目では47%にも及んでいます。

しかもこの外国人居住者の割合は年々伸びています。
10年後もしくは20年後には、この地域に住む日本人はいなくなり、外国人だけが住む地域になるかもしれません。そう考えると、現状のこの
地域での姿は、将来の日本の姿ともオーバーラップします。
つまり、外国人が増えていき、日本人が減っていく。しかも高齢者は一人暮らしが多く、困窮した生活保護受給者も多くなる。

さらに将来は、外国人の高齢化という問題も起きてくる。
ですから、この地域での現状の問題にしっかりと対応していくことは、将来の日本の課題に有効にアプローチできる可能性があると思っています。

やりがいはとても感じていますが、この地域での診療活動には難しいことが多くあります。例えば、アルコール依存や薬物依存の方とか、海外で感染して国内に持ち込まれる輸入感染症の人もいます。結核感染者もすごく多いです。

日本ではすでに撲滅されている感染症への対策や、外国語への対応とか、それこそ多種多様な対応を考えなければなりません。
外国人が抱えている慢性疾患にも、民族それぞれに違いがあります。

これからは、韓国の人のための慢性疾患治療や在宅医療、中国の人のための慢性疾患治療や在宅医療など、それぞれの民族や国民性の違いも踏まえた地域医療も考えなければならなくなるでしょう。現状ではそれらはまだ手探り状態です。

お互いに接しても交わらない民族コミュニティー特性

ここに住んでいる外国人の多くは、程度の差はあっても日本語を理解できます。しかし、中には稀に20年以上も日本に住んでいても一言も日本語が話せない人もいます。

自分たちのコミュニティー深奥部で生活している人達は、日本語を使えなくても十分に生きていけるのです。
ここでは民族コミュニティーが多く存在しています。また、それらのコミュニティーに根差した医療活動を行っている専門のクリニックもあります。

但し、地元の医師会とのコミュニケーションはあまりとれていません。これからの課題の一つだと思います。

私どものクリニックには、日本の方だけでなく外国の方も多く来院されていますが、例えば飲食店などで、日本の人がよく行くお店と、韓国の人の行くお店、中国の人が行くお店とか、それぞれの出身国で分かれる傾向があります。

国際化というのは、多民族、多国家の人が席を同じくしてコミュニケーションを取り合うということではなく、それぞれの民族や国籍のコミュニティーが、多民族のコミュニティーと接しながらも交わらず、それぞれで存在し続けるというということではないかと思います。

地域密着性が非常に強い、患者の集客特性。

ここで外来診療を始めてみると大きな地域特性に気付きました。外来患者さんの集客で地域密着性が非常に強いということです。
外来患者さんの多くは半径500mくらいのとても狭いエリアの人達です。

そうなると、その狭い地域の変動によって、当クリニックの外来診療や医療の在り方から、クリニックのすべてが大きく影響を受けます。
それが時代と共にどのように変動するのか、無関心ではいられません。

いろいろと調べたり、それに合わせた対応をしていくうちに、先ほど述べたように、この地域に起きている大変なことに気づいたわけです。

この記事の著者/編集者

坂本諒 法人 役職

開発中です

改行テスト

この連載について

在宅医療で培った医療資源を外来診療に活かし地域のかかりつけ医を目指す

連載の詳細

最新記事・ニュース

more

↓2000(画像の表示領域の2倍より大きい) ↓1320(画像の表示領域の2倍) ↓1280(画像の表示領域の2倍より少し小さい) ↓800(画…

大庭彩 1Picks

かかりつけ医とは、マラソンの伴走者のように、ゴールまで患者さんの人生に寄り添う存在 英:本日はよろしくお願いします。 西嶋先生は、かかりつけ医と…

坂本諒 1Picks