#03 認知症という言葉のあいまいさ。
連載:しなやかさと力強さで創る認知症になってもだいじょうぶな社会
2017.09.03
藤田さんがこの本で語るもう一つのポイントは進行について。
認知症というと初期も中等度も高度の時期も一緒に考えられてしまうことがある。
本書で藤田さんは「今の社会の中にある認知症の人」のイメージはどのようなものでしょうか?」と問いかける。
そして、「『年をとったら認知症になる』『何もわからなくなる』
『自分が自分でなくなる』『もの忘れをする』『周りの人に迷惑をかける行為をする』『認知症になったらおしまいだ』などなど……。
何の希望も持てないマイナスのイメージが多いのではないでしょうか」
と書く。
そして
「私がアルツハイマー病とともに歩んできた人生の 年間は、予想に反して幸福なことが多かった」
と上記の認識を覆している。
「人間関係が大事であり良い環境をつくるには、周りにいてくれる人との良い関係ができていることが必要だと思います。
そのためには、早くに病気が発見されることが重要になるのですが、『早期』とか『初期』ということがどういう状況なのか、あまり知られていないのが実情ではないでしょうか。
そもそも認知症という言葉はとてもあいまいです。認知症は病名ではありません。認知機能が低下していく原因になる病気(原因疾患)があるのですが、診断はむずかしいとよく耳にします。たしかに原因疾患は130種類以上もあるといわれていますから。
しかし、中には服薬や手術をすれば治る認知症もあります。私の場合はアルツハイマー病と診断されたのですが、根拠ある検査で診断をきちんとしていただけたので自分でもそうなんだと納得しています。」
藤田さんはこのように述べ、早期にきちんと診断され、周囲の人とともに歩むことができれば、もっと良い人生を歩める認知症の人が増えていくと話す。
「早期発見がふつうになっていく社会を創ることですね。そのためにも異変を感じたら、恐れることなく私は受診する方がいいと思います。
がん検診と同じようにある年齢になったら、脳の検診も受けられるようになればいいのではないでしょうか。」
と藤田さん。
島村さんは
「早期診断を阻む理由の一つに認知症であると診断された時に傷つくのが怖いということがあると思います。せっかく今までとは違うと思い、自分に起こっていることを知りたいと意を決して受診したのに、きちんと調べてくれないなら“来なければよかった”となってしまう。
藤田さんが現在受診している先生は、藤田さんと同じ方向を見つめながら治療を続けてくれていますが、そこまで医師との信頼関係が結べない人もいると思います。 空白の期間をつくらないような医療が必要だと思いました。」
と現状を見ている。
坂本諒 法人役職