#02 「認知症患者」ではなく、「認知症の人」「認知症とともに生きる人」

認知症への偏見をなくすためのキャンペーン

設立当初からスコットランド認知症ワーキンググループは、ヘルプカードの作製(自分は認知症で今こんなことで困っているから手助けをして欲しいと相手に伝えるためのカード。携帯して使えるように作られている)や、本人にとって役に立つ生活支援パンフレットの製作など、当事者の目線でいろいろな活動を展開していきます。

長年にわたるスコットランド議会への度重なる働き掛けもその一つで、今では、国内の認知症に関する全ての会議において、常にワーキンググループの参加が必須とされ、彼らの意見は国家戦略に反映されるまでになっています。

その中でも特筆すべき活動の一つが、2002年からワーキンググループが展開した認知症への偏見をなくすためのキャンペーンです。

それまで使われていた「認知症患者」などという差別的な表現を改めさせ、「認知症の人」「認知症とともに生きる人」という表現に変更させました。

現在ではスコットランド政府をはじめ、ヨーロッパ・アルツハイマー協会、イングランドのアルツハイマー協会、スコットランド・アルツハイマー協会でも「認知症の人」に表記が改められています。

日本のオレンジプラン

一方、日本においては、2012年年6月18日に厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチームが発表した「今後の認知症施策の方向性について」と同年9月5日に発表された「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)において、従来使われていた「認知症患者」が「認知症の人」に、「認知症対策」が「認知症施策」と改められました。

遡れば、その前には痴呆と呼ばれていた時代が長くありました。

これに関して当時、のぞみメモリークリニックの木之下徹医師は、「今回、厚生労働省の発表の中で、「認知症患者」ではなく「認知症の人」、「対策」ではなく「施策」という言葉が使われていますが、これはとても大きな意識変革だと思います。

何気なく使っている言葉であっても、その背景にある意識や思想を考えたときに、言葉の選択というのはとても重要です。言葉が変わると、考えや行為が変わってくるのです。」と語っています。

認知症と診断された当日から始まる支援

2009年には、最大の成果としてスコットランドの認知症戦略の策定に参加し、「認知症と診断された当日から始まる支援」を実現させました。

これはスコットランド政府が、認知症の診断を受けた本人やその家族に対して、認知症のリンクワーカーによる支援を1年間保証するという制度です。

認知症医療の現場では「早期診断・早期絶望」と言われるような状況が多くあります。早期に認知症と診断されると、絶望でうつになる人も多い。かつてのマキロップ氏もその一人でした。

この制度は、そのような人たちに生きる希望を与え、認知症と診断された後も、より良い生活を続けることができるように支援することを、国が保証するというものです。

最初からワーキンググループの活動が順調に進んだわけではなく、当初は多くの無理解や差別から拒絶されたことも多かったといいます。それでも彼は諦めずに、気付いてくれるまで根気よく社会に対して門をたたき続けました。

彼らは活動の手法を、主張する事よりも、理解して同意してもらうことに重きを置いてきたといいます。

「あれをしてくれ!と声高に叫ぶのではなく、こうしてみては如何でしょうか?こんな選択肢もあるのでは?と合理的に訴えかけていきました。すると次第に私たちを受け入れ、耳を傾けるようになっていったのです。」とマキロップ氏は語ります。

2007年には、ヨーロッパ・アルツハイマー協会に対して認知症当事者グループの設立を提案し、2013年にはヨーロッパ認知症ワーキンググループが設立されました。その結果、多くの認知症の当事者たちが声を上げ始めました。

この記事の著者/編集者

坂本諒 法人 役職

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