#02 最大の課題は、睡眠医療の専門医が圧倒的に少ないということです。
連載:睡眠・呼吸器専門の第一線で活躍する専門医を擁し睡眠医療と在宅に取り組む。
2017.10.31
睡眠医療の連携体制が作れれば理想的です。
さすがに睡眠時無呼吸症候群の患者さんについては、ある程度は診療の受け皿ができてきているとは思いますが、必ずしも診療の質が伴っているとは言えない気がします。
同じ受け皿でもしっかりと引き受けている医療機関もあれば、そうでないところもあるように感じます。
私としては、一定規模の地域に中核となるような睡眠医療の専門施設があって、そこでは患者さんの的確な診断や睡眠時無呼吸症候群以外の睡眠医療の診療が行える。
ここで診断が付いた患者さんは地域のかかりつけ医に戻し、そこでは例えば高血圧と睡眠時無呼吸症候群の医療を進めていく。そんな連携体制が作れれば理想的だと思っています。
この分野に多く医師が入ってきてほしい。
最大の課題は、睡眠医療の専門医が圧倒的に少ないということです。
日本睡眠医学会の睡眠医療認定医は全国で500人足らずという状況です(※日本睡眠医学会認定医師469名 2014年8月1日現在)。県によって一人とか数人というところもあります。
一方、社会的に見ると居眠り運転のバスの事故などは毎年起きています。そのことで本年の6月には道路交通法が改定されたり、厚労省からは「健康づくりのための睡眠指針2014」が出たりとか、良質な睡眠の在り方に対しての社会的な要請は非常に強くなってきているという印象はあります。
ですから、患者さんへの適切な診療を行う上でも、多くのドクターが睡眠医療にもっと興味をもって欲しいと思います。
専門領域に加えてサブスペシャリティとして睡眠医療の専門知識を持つことにより、診療の成果はより高まると思われます。
例えば循環器系等の専門領域における心臓係の疾患と睡眠時無呼吸症候群の関連など、いろいろな形で症状がオーバーラップしている状態があります。ですからいろいろな医師が一人でも多くこの分野に入ってきてほしいと願います。
睡眠医療は、幅広い診療域に関わってくる。
睡眠時無呼吸症候群に限らず、例えば不眠症など睡眠そのものといったトラブルを持っている方は、高血圧であったり、心臓病を発症したりすることがあります。
ましては睡眠時無呼吸症候群であれば突然死というリスクもあります。睡眠障害はうつ病や高齢者の認知症にも関係しますし、子供の発達障害にも関係したりして、本当にいろいろな病気に関係してきます。
しかしその一方では、専門の診療機関が少ないという現状があります。
例えば神奈川県内に限っても、しっかりと診療できる医療機関は数えるほどしかありませんし、都心部や地方でも大都市部を除くと診療体制も十分とは言えません。当クリニックにも山梨県や静岡県から探し当てて、はるばる来院される患者さんもおられます。
また私どもには、地方から居眠り運転で小学生への人身事故を起こしてしまった運転手の鑑定依頼などが来たりします。その地域に正確な診断ができる医療機関がないため、都心部など専門施設のあるところまで診断のために出向かなければならないのです。
専門の診療機関が少ないという現状にはいろいろな背景が考えられますが、民間レベルの医療機関では医師や専門検査技師、専門スタッフなどの人員確保や人件費、専用施設などの点で難しいという理由が大きいと思われます。
睡眠医療専門機関が増えるのは社会の必然。
例えば、睡眠状態をより正確に調べる睡眠ポリソムノグラフィー検査(PSG)は患者さんに対し8時間の検査を行うことで確定診断が下せるのですが、そのためには、その間常駐する専門医や検査技師、スタッフの体制が必要になります。
さらにはクリニックにとっては検査のための病床設置の問題もあります。それは大学病院や大規模病院などでも同じことが言えます。
医療行政の対応も含めて、これからの課題も大きいと思いますが、睡眠医療の専門機関が増えていくことは社会の必然と思います。
また睡眠障害は子供さんの発達などにおける小児科領域の関わりも強いのですが、世間的にはあまり認知されていません。そのような場合でも悩んでいるご両親にとって、お子さんの検査を受けられる医療機関が身近にあることが重要です。