#01 つい最近まで、日本では睡眠医療は重要視されてきませんでした。
連載:睡眠・呼吸器専門の第一線で活躍する専門医を擁し睡眠医療と在宅に取り組む。
2017.10.30
山陽新幹線の事故で注目を浴びる。
私が呼吸器内科の専門医として診療に従事していた頃から睡眠時無呼吸症候群は発生していましたがその当時は、興味は持っているという程度の認識でした。
その睡眠時無呼吸症候群への取り組みが睡眠医療の分野に進む契機となりました。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の存在が一躍社会に知られるようになったのは、2003年に起きた山陽新幹線のオーバーランの事故です。
しかし、実はそれよりも以前から、睡眠時無呼吸症候群が睡眠中のいびきで日中に眠くなるというだけでなく、いろいろな病気と関係している。中には睡眠時無呼吸症候群によって死亡する方もいる。というデータが報告されていました。
でも当時、大学病院でも専門に取り組んでいるドクターはほとんど皆無でした。であれば自分が専門的に取り組んでみよう思ったわけです。
睡眠医療はまだ歴史の浅い領域です。
当時は、そもそも興味を持っている医師が少なかった。沖縄の名嘉村先生が日本で最初の睡眠呼吸センターを始められたのが1990年で、それが日本における睡眠医療の実質的なスタートといえるほどまだ歴史の浅い領域です。
その後しばらくは東京や首都圏においてもこの分野は市民権が得られていない状況でした。
先人達の努力の結果、2010年前後にやっと日本循環器学会で睡眠時無呼吸症候群に関してのガイドラインが作られました。
そこでは睡眠時無呼吸症候群を積極的に診断治療につなげていくことで、いろいろな循環器系の疾病の発生リスクが落ちてくるということが発表されました。
その結果、睡眠自体に関しても社会の意識が高まり、睡眠時無呼吸症候群だけでなく、ナルコレプシーとか睡眠リズム障害などいろいろな睡眠障害が注目され始めて、今の段階に至っていると思います。
実際に睡眠医療に関してはこの10年で大きく変化してきていると感じます。それこそ10年前はあまり注目もされていなかった状況から、今では医学部の教科書にも載っています。
睡眠時無呼吸症候群についていえば、ほとんどの呼吸器領域のドクターは意識されているでしょう。
いまだに多い睡眠医療に対する理解不足。
今でも大変なのは、どのような検査をやるのか医療機関に限らず行政でもなかなか理解して貰えない部分があることです。依頼されて病院の中に睡眠センターを作るお手伝いをすることもあるのですが、睡眠検査では臨床検査にカテゴライズされる検査が必要になります。
しかしそのような場合に、睡眠検査に必要な知識を有する臨床検査技師が少ないのです。
看護師も何をしたらよいのか分からない。
例えば大学病院の中でも、従来行われている通常検査の中にひとつ余分な検査が入ってくるというように捉えられて、その重要性を説明してもなかなか理解されず、検査体制が作り難い場合もあります。
そのような時は、私と研修医の先生の二人で検査機械を病棟に運び込み、患者さんへの取り付けから翌朝の取り外しまで自分たちで行っていたこともありました。睡眠医療専門の検査技師は今でもまだまだ少ないと感じます。