#04 20年以上前から映像によるインフォームドコンセントを行う

ビジュアル・システムの導入

外来診療室にビジュアル方式による耳鼻科診療ユニットを設備し、インフォームドコンセントに役立てています。

これは、診療用ヘッドライト・耳診察用の顕微鏡にCCDカメラを取り付け、モニター画面に病態の映像を映し出すもので、患者さんに患部をお見せしながら病態や治療方針を説明しています。

このシステムは、1989年に父の神尾友和がこの地に神尾記念病院を移転した時に設置したもので、今でも十分に機能して稼働しています。

当時はまだ患者サービスと言う言葉はあまり馴染みがありませんでした。どちらかと言えば、患者は医者に治療を任せておけば良いというような風潮でした。

しかし父は、患者さんへの説明サービス、今で言えばインフォームドコンセントの必要性を感じていたのだと思います。それがビジュアルシステムで本人映像を使っての説明であれば一目瞭然です。それが患者さんのより一層の安心につながります。

今では当たり前ですが、当時としては非常に先進的だったと思います。「見れるんですか!」と今でも驚かれる患者さんがいます。当時これを設置した父の先見の明には感嘆させられます。

鼻領域に関しても副鼻腔炎の手術に内視鏡手術を先駆的に取り入れ、ナビゲーションシステムも10年前から導入しています。

ナビゲーションシステムの導入も当時耳鼻咽喉科では珍しいことでしたが、目や脳とも近く安全面でも不安を感じる患者さんが多いなか、そういった不安を少しでも和らげることも重要な使命であると考えたからです。

安全性を高める手術室内の指示モニター

手術の模様は、リアルタイムで院長室、医局、手術室内、手術室のスタッフルームなどに設置されたモニターに映し出せるようになっており、ライトペン、マイクによって院長や他の医師と検討や相談が随時できるようになっています。

それゆえに、執刀医だけではなく、多くのスタッフの監視下で行われることになり、手術の安全性を高めることに貢献しています。

時には担当のドクターに対して、私がサポートに入る事やアドバイスを行ったりもしています。

また、このシステムは研修医や当院職員に対して手術の供覧や教育にも役立てています。手術の詳細は、一部の手術(内視鏡を使用しない鼻の手術、咽喉の手術)を除いてビデオテープに収録・保存され、医師の学会活動などにも活用されています。

有床の単科専門病院を維持してゆくこと

今後の医療承継を考えるときに、今の医療経営の大変さを考えると次の代に継承させることに多少の迷いも出てきます。

お陰さまで、患者数も確実に増えており、地域の再開発で今後も患者数の増加が確実に見込めていますが、3年間の医療経営に携わって感じることは、これからの医療経営はますます厳しくなっていくであろうということです。

更には、この規模の単科専門病院で入院用の病床を持って経営を維持してゆく事は大変な苦労を要します。

何故、耳鼻咽喉科に入院施設が必要なのかというと、今でこそ日帰り手術なども普及していますが、中には鼓膜の手術とか症状が落ち着くまでは安静に様子を診なくてはならない患者さんもいます。

昔は耳の手術は2週間位入院していました。いまは短くなって、それでも1週間くらいの入院は必要です。耳鼻科領域の特徴としては手術でも出血することが多い。

また、患者さんは耳鼻科領域での出血に非常に敏感です。頭や顔に近いと言う事もあり、耳や鼻から血が出ると動揺してしまう患者さんが多いのです。

ですから、出血がある間はすぐに退院させる事も難しい。耳や鼻からの出血で慌てて駆け込んでくる患者さんもいますが、殆どはそれほどに重篤ではない事も多いのです。

また、遠方からの患者さんもいますから、患者さんの安心のためにどうしても必要な入院もあります。しかし、病床を維持する事の運営コストや人件費を考えるとロスが大きいために、病床をなくして診療のみの耳鼻咽喉科専門医療機関も多くなっており、先に述べたように、入院が出来る耳鼻咽喉科専門病院は関東では当病院だけとなりました。

大学病院を見ても、耳鼻科が少なくなってきており、研修医も限られた大学病院だけで、他には殆ど入ってこない。必然的に医療レベルは落ちているのが現状です。

しかも、いろいろなところで診て貰っても治らない患者さんも含めて耳鼻咽喉領域の病気で困っている患者さんが多くいて、受け入れ先が少ないという現実があります。

創業の理念を更に突き進めて耳鼻咽喉領域の病気で苦しんでいる人々を一人でも多く治してゆく事が、神尾記念病院の院長としての私の使命と感じています。

この記事の著者/編集者

坂本諒 法人 役職

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この連載について

「神尾で診てもらって良くなったと聞いて…」と、毎日全国から多くの患者が訪れる。

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