#02 「ゆとり」を持って医療に従事できるような体制や環境作りに心を砕いています。
連載:「神尾で診てもらって良くなったと聞いて…」と、毎日全国から多くの患者が訪れる。
2017.11.15
病院にとって「ゆとり」は最も大切です。
病院にとって何が一番大切なのかと聞かれれば、私は「ゆとり」だと答えます。医師も看護師も検査技師もスタッフも、仕事に「ゆとり」がないと技術の進歩も豊かな発想も生まれない。
現場で慌てると医療事故やいろいろな問題が起きてくる。
どんなに良い医療を提供しても、たった一つの事故で総ては台無しになってしまう。それが一番怖い事です。
ですから、医師を中心に全スタッフが忙しい中にも、ある程度の「ゆとり」を持って医療に従事できるような体制や環境作りに心を砕いています。
常勤医の数や診療時間、院内スタッフの確保などで、時には経営の効率化や採算性と対峙することもあります。しかし収益性を上げる事と同様に大切にしなければならない事があると思っています。
当病院は耳鼻咽喉科の専門病院という特性ゆえに、他の医療機関で治らなかったり、原因が分からないなどという、患者さんが多く来院されます。
そんな患者さんたちはよく「藁をもすがる」と言う言葉を口にされます。そのような患者さんたちに満足のいく診療を行い、ここに来て良かったと言って頂く為には、非常に多くの労力、気力、精神力を使います。そのために、働きやすい環境作りが最も大切なのです。
それが「ゆとり」なのです。
当病院には、現在8名の常勤医と16名の非常勤医がいます。(※2018年現在は常勤医13名、非常勤医18名)
これだけの常勤医を揃えるのは大変なことですが、患者さんにとって必要なことなのです。これだけの常勤医を確保し続けるためにも、ゆとりが必要なのです。将来的には独立されていく先生もおられますが、それまでは最大限ここで働いて経験を積んで欲しいと思っています。
常にドクターの勤務状態や診察には気を配り、適切なサポートもできるようにしています。院長室にあるモニターでは病院内の手術室などが見れるようになっていますので、時には術中のドクターに助言をしたりヘルプについたりして、ドクターが一人で抱え込み過ぎないように配慮しています。
耳鼻科医を志す研修医が減っている
耳鼻咽喉科で病床を持つということは大変なことです。この規模の耳鼻咽喉科の専門病院は関東では当院だけですし、日本でも5病院くらいしかないと思います。
特に苦労するのが、耳鼻咽喉科の専門医を集めることです。耳鼻咽喉科の専門病院を継続してゆくためには、何と言っても耳鼻科のドクターを揃えておく事が最も大切な仕事で、院長を継承してからの私の一番の苦労もそのことです。
今の研修医制度に変わってから、耳鼻咽喉科は一番人気が無いとも言われており、耳鼻科医を志す人が一番減っているのは大きな問題です。
世間では小児科医や産科医を目指す研修医が少なくなっていると言われますが、実は耳鼻科医が最も少ないのです。
研修医制度が変わってから状況が大きく変わりました。大学病院も今では耳鼻科の入局は少なくなっています。
当病院は研修医の受け入れ機関にはなっていますが、残念ながら当病院では研修医が入ってきても、忙しくてそれを教える余裕が無いのが現状です。
1日300人の患者さんが来院する。1日5,6件の手術を行う。というような状況では研修医を育てることは非常に難しい。ですから責任を持って育てられないならば研修医を受け入れてはいけないと思っています。
しかしこれからは、今後の制度改革に期待しつつ、私たちも専門医療機関として耳鼻科の研修医を育てる仕組みづくりに取り組まなくてはならないと痛感しています。
今は大学病院においても、耳鼻科のドクターが少なく臨床の経験も十分には積めなくなっています。耳鼻科は基本的には外科系ですので、技術を伸ばしたいと願うドクターが当病院を希望されてきます。大体10年位のキャリアを持たれている方が多いです。
耳鼻咽喉領域での術数や治療数では、大学病院や総合病院にも負けない実績がある当病院だからこそ、磨ける技術や積めるキャリアがあります。
だからこそ、当病院で働く医師は自分の技術を伸ばしたいという確かな志がないとここで続けていくのは難しく、それだけ高いレベルも要求されます。