#03【不妊治療】国家100年の計としての不妊対策が必要
2020.05.14
産めるときに産まないと産めなくなる
今後は、現在杉山産婦人科丸の内で開設している不妊ドックに力を入れていきたいと思っています。そこでは啓発活動も含めた不妊検診を行っています。
一番の不妊治療対策とは、産めるときに産まないと産めなくなるということを若いうちから知ること、それを啓発してゆく事だと思っているからです
驚くべき事に、女性は年齢が上がると妊娠し難くなるということが多くの人に知られていないのです。
女性の卵子の数は加齢とともに減ってゆく
実は女性の卵子の数は決まっていて生涯で増える事はありません。女性は生れた時には約200万個の卵子を持っていますが加齢とともに減ってゆき、さらには古くなってゆきます。
不妊治療の技術がどんなに進んでも、遺伝子が老化したら無理なものは無理なのです。
実は日本は体外受精の実施数が世界で一番多い国なのですが、理由は施術年齢が高く、同じ方が時には10回と数多く行っているからです。
しかし海外では一人が通常は1回か2回しか行いません。だから日本では不妊クリニックが乱立に近い状態になっているのかもしれません。
2年位前から、AMH検査という「卵巣年齢を計る検査」が行えるようになりました。これは血液検査でご本人の卵巣年齢が5歳刻み位である程度判るというものです。
例えば、20歳でAMH検査を受けて卵巣年齢が30歳と出たら、20歳代で結婚しないと妊娠が難しくなります。それを知らないで、35歳で結婚したらもう体外受精でも妊娠は非常に難しくなってしまう。
一番の不妊治療対策とは若い人たちへの啓発
なにも高齢者に限った事ではなく、30歳と35歳と40歳では妊娠する確率がそれぞれ違うと言う事なのです。
その事実を20歳代から知っていて欲しいのです。知らないから出産を先延ばしにして、いざ産みたいと思った時には妊娠しにくい体になっている女性が多いのです。
将来の自分の各年齢における妊娠の確率がある程度判れば、人生設計の中で若いうちに妊娠、出産を考えるでしょうし、若くして子供を産めば必ずもう一人欲しくなるでしょう。そこには生の相関があると思います。少子化対策としても有効なはずです。
今の時代は30歳位でも未婚の女性はとても多く、それが普通です。しかし30歳や35歳で既にお産をしたくてもできない体になってから、このことを知っても遅いのです。
この事実を知るだけでも不妊の方は半減するでしょう。逆にここを変えていかないと、これから不妊の人はますます増えていくと思われます。
ですから私としては特に若い方に向けての啓発活動の意味でも不妊ドックに力を入れたいのです。
社会全体で取り組んでゆくべき重要なテーマ
しかし、若い方で不妊検診に来られる方はまだ少ないですね。実際には未婚の40歳代の方たちが来られて、現実を知ってショックを受けられることが多いです。
また、AMH検査を不妊治療の一環で行っている不妊クリニックが多く、AMH検査だけを単体で受け付けている不妊クリニックは殆どありません。誰もがAMH検査だけでも受ける事ができるのは当院丸の内の不妊ドックだけだと思います。
視点を変えると、不妊対策には働く女性が置かれている職場環境や、若くして出産できる社会環境作りなど別次元の課題もありますから、医療分野に限らず日本全体における少子化対策の一貫としても社会全体で取り組んでゆくべき重要なテーマではないでしょうか。
※AMH検査とは
一般的に「卵巣年齢を計る検査」と言われる。AMHとは、抗ミューラー管ホルモンと呼ばれる女性ホルモンの一種で、卵巣の中にある、卵胞(発育卵胞、前胞状卵胞)から分泌されるホルモン。卵胞の数は誕生時に約200万個ありその後増える事は無い。AMH値が高いとこれから育つ卵胞が卵巣内にまだたくさんある状態で、値が低いと卵胞が少なくなってきている状態をさす。今後排卵できる期間が長いか短いかを予想するもので、年齢が上がるほど排卵できる期間が短くなり、卵巣機能の予備能を判断するひとつの目安となる。
若い人には是非産婦人科医を目指して欲しい
私は、医者の原点は人間の出生に携わる産科医にあると思っています。
人はまず生命の誕生があってその後の病気、老人医療や介護と続いてゆく。その集約が産科医にあると言っても過言ではなく、若い人には是非産婦人科医を目指して欲しいと思います。
妊婦さんはいろいろな疾患を持っていることもあり産婦人科医は全身の疾患を診る能力を求められます。ですから有能な医師に産科医を目指して欲しい。
しかも今は高齢出産になっています。とうとう今年、第1子出産平均年齢が30.04歳と30歳を超えました。これは先述した見地からすると大変深刻な問題です。
もっと若かったら産めたという人達が多い
実は体外受精を受けている患者さんで、精子が少ないか卵管が詰まっているというような絶対的な適応を持って治療を受けている人は全体の10%位と非常に少ないのです。
一方60%から70%が高齢者の方で成功率も低い方たちです。もっと若かったら産めたという方たちで、病気が理由ではありません。
これは正しい知識と情報による啓発で是正できるところです。そうなっていくと、不妊治療は本当に必要な人たちだけの治療に集約されていき、結果として不妊クリニックも淘汰されていくでしょう。私はそれで良いと思います。
体外受精保険適用の年齢制限
海外では、40歳以上は体外受精を禁止していたり、35歳までしか保険が効かない国もあります。加齢による不妊は病気ではないし、35歳以上では体外受精の成功率が極めて低くなるので治療の意味を認めていないからです。
現状では、日本で体外受精に保険適用の年齢制限を掛けたりする事は不可能かもしれませんが、厚生労働省がそのようなメッセージを発信できれば出生率の低下も是正できるはずです。
幼稚園を増やして待機児童を減らすなどの対処療法以上に、根本的な課題ではないでしょうか。日本にとって100年の国家戦略として取り組むべきだと思います。
※平成28年4月1日から特定不妊治療助成金の対象範囲、助成回数が変わりました。
対象年齢が、従来の限度なしから43歳未満に。年間助成回数が従来の年間2回から限度なしに。通算助成回数が従来の通年10回から、初回40歳未満は通算6回、初回43歳未満は通算3回に。通算助成期間は従来の通算5年から限度なしへと変更されました。(厚生労働省)
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法人役職 2021年04月29日
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