#02 EBMに基づいた治療は、統合医療においても必要だと考えます
連載:西洋医学と東洋医学、自然療法を結集した統合医療によって心身をトータルケアする。
2017.11.25
西洋医学、漢方、自然療法で治療に取り組む
朱クリニックでは、西洋医学の診療科目のほかに、漢方、自然療法に取り組んでいる。
行っている自然療法は、鍼灸、薬草温熱療法(イトオテルミー療法)、足裏反射区療法(リフレクソロジー)、アロマセラピーである。これらは、診断をしてその人に必要かどうかを判断して取り入れられる。
鍼灸は、鍼やモグサによるツボへの刺激が経絡を介して内臓に働きかけ、自然治癒力を高めるようにする。薬草温熱療法は、モグサと芳香性生薬を含む植物性物質を使用し、温熱刺激作用によって血液とリンパ液の流れを促進させる。足裏反射区療法は、足裏に適度な刺激を与え、体内の各器官へ間接的に働きかけ、体調を整えていく。
アロマセラピーは、香りの成分とマッサージによる刺激の相乗効果で心身に働きかける療法である。植物から抽出された精油に含まれる芳香成分が、心身の病気に補助的な効果をもたらすとされている。ストレス予防や日常の健康管理に役立つ。
ここで実践しているのが、誰でも受けられる無料の10分間鍼灸やアロマの治療である。朱院長は当初、スタッフたちにトライする価値と意義を説得して始めたが、いまで多くの患者さんに定着している。
「どの治療法も目標としていることは、気、血、水のめぐりをよくすることです。流れをよくすることがすべての基本です。
透明なところには病気はなく、淀んでいるところに何かが起こる。流れをよくするにはどうするか。まず運動をする。つぎにセラピーがくる。それで何かあったら病院にいく。この順番に間違いなく、病院が最後です。この順序を違えると堂々めぐりすることになるのです」
データに基づく科学性の検証で普及を目指す
朱院長は2005年に、オリエンタル・アロマセラピー・カレッジを立ち上げ、理事長兼講師を務める。
校長の小山めぐみ氏は、救命救急センターで朱院長を一緒に働いていた。小山氏が看護師時代に英国で学んだアロマセラピーについて聞き、朱院長は癒しの治療として統合医療に取り入れられるのではないかと考えた。
しかし、そこには科学的な検証が無く、医療側として納得のいく最低ラインまで科学性を引き上げなければ、医療で普及していくのは難しいとも思われた。
それでもアロマセラピーを医療に役立てたいと思う看護師も増えてきていた。その意識は広がっていくだろうと、朱院長は推測したのである。
そうしたなかでオリエンタル・アロマセラピー・カレッジが設立され、教育とともに研究や臨床によって検証が進められていった。
現代医療ではEBM(Evidence Based Medicine)が強く求められている。統合医療でもEBMにもとづいて治療がなされていかないと、単に癒しやアメニティと捉えられ「あったほうが良い」という世界で終わってしまい、絶対に必要であるという位置づけにまで至らないのである。
安全な品質であるという精油の評価も検証データとして必要になる。精油を科学したアロマセラピーを追求していき、現場で普及していくために、朱院長は学校とクリニックの両方で奮闘している。