#03 全てに緻密な計画性を施し、患者さんと自然に優しく、災害に強い病院を目指す。

自然にやさしく災害に強い病院として

足利赤十字病院の駐車場に設置された風力発電の風車4台は、トリアージカラーで今や同病院のシンボル的存在である。正面玄関前には太陽光発電パネルが設置されており、共に災害時に利用できるようになっている。

「これまで病院はCO2排出に無頓着でしたが、この病院では自然にやさしい病院をめざしています。病院もそういう取り組みを行っていることが、一目でわかるようにすることが大切なのです。」

災害に強い病院として、免震構造を採用した。建物が157個の免震装置の上に乗っている構造になっている。正面玄関の庇は全長80mを超え、災害時の収容スペースとして利用できる。

また講堂が設置され、災害時には緊急病棟になり300人の収容が可能だ。壁には医療用ガス、吸引装置が装着されている。ふだんは地域住民とのイベントや健康講座などが開催される。

これまでの病院の建物は基壇型を典型とする。それに対し、同病院は6分棟型。ホスピタルモールを中心に、病棟、外来棟、中央診療棟、エネルギー棟、健診棟、講堂棟がサテライト状に配置されている。

建物に入ると、中庭に面して明るい光を取り込むホスピタルモールに至る。2階吹き抜けで、ここから奥への視認性をもたせて、目的の場所へ移動しやすいようにしている。

9階建ての病棟は2階からが病室である。救命救急センターは、中央診療棟1階に設置されている。

分棟型の目的は、成長と変化への対応である。棟によって耐用年数が異なる。病棟は30年以上もつが、検査機器の入れ替えが多い中央診

療棟の耐用年数は比較的低い。耐用年数を越えても、広い敷地の空き地を使えばその部分だけの改築移転ですむ。

新しい足利赤十字病院には、全てに緻密な計画性が施されている。

分棟型と一般病棟全室個室のメリット

従来の病院は建物全体が、スクラップ&ビルドが繰り返され、無駄が大きかった。同病院のような6分棟型構造設計であると、変化にフレキシブルに対応できるのでメリットは大きい。ある棟が不要になればそこだけ閉鎖して、他の用途に回すことなどもできる。

患者は中央診療棟で全ての検査を済ますことができるので、院内アクセスが楽になった。外来患者ならば、外来棟で受付から会計までワンストップで診療が受けられる。

病棟には、個々の診療科名称がついていないため、多様な診療科目の患者を受け入れやすく、ベッド稼働率は常に100%近い。

病棟と病棟とは関連する機能を水平につなぎ、スムーズに移動できるようになっており、さらには病棟の半分は、患者が入れないバックヤードになっているので、職員は患者と会わずに別の導線で全ての病棟にアクセスできるようになっている。

「個室世代の若い人たちが疾病年齢になったとき、望むのは当然個室です。また、多くの病院では個室から埋まっていく傾向にあります。ですから、全室個室化は新病院の重要なコンセプトです。」

一般病棟の全室個室化により、患者はプライバシーが配慮された快適な入院生活が送れるようになった。各個室は木質系を中心の落ち着いたインテリアで、ICカードシステムによる外来者の入退室管理を行い、セキュリティーも保たれている。

この記事の著者/編集者

坂本諒 法人 役職

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医師の視点で医師中心の医療経営戦略を推進し、地域医療に貢献する。

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